VictorのSX-3の音質はどのようなものでしょうか。
初めて日本のスピーカーが海外のスピーカーに追いついたと国内で言われた、SX-3。
大多数の人に、その音が認められていることは周知の事実です。
そして、市場には定期的に出回ってはいるものの、サイズも大きいしどんな音が出るか分からず、手を出しづらいところもあるかも知れません。
そこで、VictorのSX-3を所有している、元ハードオフ店員でありオーディオ歴20年である私が、真空管アンプSV-S1616D多極管仕様で鳴らしてみた話を書いてみたいと思います。
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VictorのSX-3の音質
先に音質を辛口評価で図に表すと、以下の感じ。
音質評価 | 音の特徴 | |
低音域 | ★★☆☆☆ | ゆったり目でサイズ以上の量感だが扱いが難しい。下はかなり伸びている |
中音域 | ★★★★★ | 女性ボーカルが絶品。これ以上の量感は密閉型では望めないだろうという程 |
高音域 | ★★★★☆ | シンバルはまだまだだが、耳触りがとにかく良い。上は伸びていない |
VictorのSX-3は、このような見た目ですね。
ツイーターのネジが錆びていたので新しく交換済みです。
まずはSX-3について軽く説明をします。
SX-3には、ドイツのクルトミューラー社の25cmウーファーが搭載。
クルトミューラー社は、ご存じタンノイのスピーカーユニットを制作している会社です。
そのため、タンノイのスピーカーの音の特徴である、ゆったり目な低音域が出てくるであろうことが想像できますね。
また、クルトミューラー社のユニットの中音域は絶品と言われており、事実SX-3の中音域はとんでもなく聴きやすい、耳触りの良い音になっていると言われているのです。
そして、ツイーターユニットは5cmのソフトドームであり、ツイーターにしてはかなりサイズが大きい設計なのが特徴。
11kHzあたりから一気にロールオフしていくため、現代のハイファイ再生とは全く違った音となっていそうです。
実際、ツイーターユニットのこの設計からも、いかに中音域の再生に重点が置かれていたのかが、何となく想像できてきますね。
そんなSX-3を、真空管アンプで鳴らしたらどんな音になるのよと。
ゆったり目な低音域に包まれながらの、質が良く量感のある中音域になるのかと期待しながら、私のSV-S1616Dと接続して音楽を鳴らしてみました。
ちなみにですが、私のSX-3はジャンク品を購入しております。
BASS ADJUSTスイッチの接触が悪くウーファーユニットの音が出ない代物だったために、スピーカーの中の回路をいじってBASS ADJUSTスイッチをスルーしています。
真空管アンプで鳴らしてみた
私のオーディオシステムはこのような感じです。
- CDプレーヤー:ケンウッド DPF-7002
- D/Aコンバーター:Topping D20(MUSES02使用、トロイダルトランス電源)
- 真空管パワーアンプ:SV-S1616D 多極管仕様 KT90
- トランス式パッシブプリアンプ:イシノラボ CA-777GFM/HP
- 部屋:6畳
それでは音楽を再生していきます。
まずは妹尾美里さんのアルバム HanaのPas de chatから。
こ、これは。
すさまじく低音域が出てきますね。
ピアノの低音のパワーがめっちゃくちゃ強い。
というか、出過ぎです。
BASS ADJUSTスイッチを分解修理でもして、使えるようにしたいくらいの低音域です。
(ちなみですが、BASS ADJUSTスイッチはONにすると低音域を弱めるもの)
これはスピーカーの高さの調整が大変だぞと思いつつ、6畳の部屋では厳しいか?という疑問も出てきました。
一旦、他の曲に替えます。
Miles DavisのNARDIS。
うーん、好きな人は好きそうなベースの音です。
ベースなのにすごく前に出てきてしまいます。
本当に国内で認められた音なのか、低音域が出過ぎてしまうのは経年でウーファーのエッジが弱ってきているからか?
それとも真空管アンプではなく、トランジスタアンプでないとうまく鳴らないか。
うちにはトランジスタアンプはないので、色々と考えながら、ひとまずすぐにできる対処方法である、プリアンプを通さずにSV-S1616DにD/Aコンバーターから直接繋いでみることにしました。
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プリアンプはない方がよかった
トランス式パッシブプリアンプを通さなくすると、音の解像度が下がるため少しだけ音が荒くなります。
ただ、今までの経験則から、こうすることで低音域の量感がスピーカーにより変わるのです。
ではSX-3の場合はどうか。
なんと、低音域の量感がちょうどよくなり、音全体がバランス良く聴きやすくなったではありませんか。
なるほど、何でもかんでもプリアンプを通せばいいというものでもないのだな、と改めて確認できた体験でした。
シンバルの音はソフトドームツイーターの割に意外と出てきますが、どちらかと言うとキレがあるというよりは上品に近い音。
ラッパの音はかなりの量感を持って飛び出てくる。
ボーカルはこれでもかってくらいに歌い上げてきて、不足感などなく聴く人によっては出過ぎ感が出てくるほどのもの。
すごいですね、SX-3の中古相場は状態がよくないために1万円以下のものが多い中で、これだけの中音域が手に入るというのはおトク感満載です。
ロック系もジャズもどちらも上手に鳴ってくれて、意外とPOPSもいけますね。
クラシック系はツイーターの上が伸びていないためか、弦楽器のリアルさが足りないように感じました。
D/Aコンバーターからパワーアンプ直結の方が、色々な曲を聴いてみようと音楽を次々再生しておりました。
最も聴き入ってしまったのは、女性ボーカルものとロック系の曲です。
SX-3はこのあたりのジャンルが得意なのかも知れませんね。
懲りずに6BM8アンプも接続
実は私、6BM8の3結アンプも所有しております。
真空管ヘッドホンアンプキットで、スピーカーも鳴らせる優れもの。
出力は1.5W+1.5W。
トランス式パッシブプリアンプを通して、この6BM8真空管アンプでSX-3を鳴らすとどうなるか?と試してみたくなりました。
そして鳴らしてみると、意外や意外、印象は全く変わりませんでした。
低音域は相変わらず出過ぎるくらいに出てきますね。
高音域の出方はSV-S1616Dで鳴らした時と変わらず上品な感じで、中音域の量感はアンプの性能が劣っている分だけ出ていないように聴こえます。
(劣っていると表現しましたが、このアンプキットの音はイヤホンを接続して聴くとよく分かりますがとんでもなく良い音がします)
これはもはや、SX-3は当時のVictorのアンプで鳴らしてあげる方が、最も簡単なのかも知れないなぁと思いました。
こんなに低音域が出てくることで悩んだスピーカーはかつてないと思うほどです。
ということで、スピーカーの高さを調整。
イスに座った時に、ウーファーがちょうど耳の高さに来るくらいにしました。
この高さが、最も中音域の量感があり、高音域もよく聴こえるために低音域とのバランスが取れたリスニングでした。
良いところは先に書いた通り。
ロック系やジャズ系、女性ボーカルものは最高に鳴ってくれます。
総じて、SX-3は低音域をうまく鳴らすことができれば、中古相場をはるかに超えた音を手に入れることができるスピーカーと言えるでしょう。
まとめ
VictorのSX-3の音質を、真空管アンプで鳴らしたらどうなのかを書いてみました。
どうやらトランジスタアンプの方が相性的には良さそうですが、少なくとも「低音域の量感が足りないということで悩まされることはない」ことは間違いないです。
女性ボーカル、ジャズ、ロック系音楽を聴く方にはおすすめのスピーカー。
25cmウーファー搭載なので、スケールの大きい音が出てきて面白いです。
私から言えることは一つ、BASS ADJUSTスイッチを改造してスルーしない方がいいです(笑)
VictorのSX-3、ぜひ一度お試しあれ。
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