スピーカーについて知っておこう!
オーディオアンプは、スピーカーを駆動して音を出すための機器です。
しかし、アンプを設計・製作する技術者は、スピーカーの動作や特性をどこまで理解しているのでしょうか。
本記事では
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スピーカーの基本的な動作原理
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アンプの駆動方式の違い
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トランジスタアンプと真空管アンプで音が違って聴こえる理由
を、初心者にも分かるように、しかし重要なポイントは省略せずに解説します。
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スピーカーの動作原理
スピーカーの基本原理はフレミングの左手の法則です。
磁界の中に置かれた導体に電流を流すと、電流と磁界に対して90度の方向に力が発生します。
この力によって振動板が前後に動き、空気を揺らすことで音が生まれます。
つまり、スピーカーは電動機(モーター)と同じ原理で動いている装置です。
オーディオアンプは、音の信号を電流としてスピーカーに送り、その電流の変化によって空気を振動させ、私たちは音として聴いています。
スピーカーの音は「どう駆動するか」で変わる
スピーカーの周波数特性(音の出方)は、アンプがどのような方式でスピーカーを駆動しているかによって変わります。
ここで重要になるのが
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定電圧ドライブ
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定電流ドライブ
という2つの考え方です。
定電圧ドライブとは?
定電圧ドライブとは、スピーカーのインピーダンスが変わっても、電圧を一定に保とうとする方式です。
たとえば
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8Ωのスピーカーが
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4Ωに下がったとしても
アンプは同じ電圧を出そうとするため、流れる電流は約2倍になります。
現在、一般的なトランジスタアンプは、この定電圧ドライブに非常に近い動作をしています。
スピーカーの周波数特性を測定する方法も、この定電圧ドライブを前提としたものが使われています。
この測定方法は、80年以上前にデンマークのB&K(ブリュエル&ケアー)社が定めた方式が、現在も踏襲されています。
トランジスタアンプは「ほぼ定電圧アンプ」
トランジスタアンプは、多量の負帰還(NFB)をかけることで、内部抵抗を非常に低く作ることができます。
一般的に、ダンピングファクター(DF)が50以上あれば、定電圧アンプと考えて差し支えないでしょう。
特に、多数のパワートランジスタを並列に使い、低内部抵抗を徹底して追求したアンプ(例:アキュフェーズなど)は、非常に定電圧的な特性を持っています。
そのため、私たちはスピーカーカタログに記載された周波数特性に近い音を、実際にトランジスタアンプで聴いていることになります。
定電流ドライブとは
一方、定電流ドライブは、負荷インピーダンスが変わっても一定の電流を流そうとする駆動方式です。
これは、アンプの内部インピーダンスをスピーカーよりも十分大きくすることで実現されます。
具体的には、スピーカーと直列に100Ω程度の抵抗を入れて駆動すれば、定電流ドライブとみなすことができます。
この状態でスピーカー端子電圧を測定すると、いわゆるスピーカーのインピーダンスカーブを知ることができます。
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半導体アンプと真空管アンプの音の違い
では、半導体アンプと真空管アンプでは、どのような音の違いが生まれるのでしょうか。
半導体アンプは定電圧アンプと考えると、スピーカーのインピーダンス変動に関係なく一定電圧を供給できます。
そのため、スピーカー設計者は比較的自由にネットワーク(クロスオーバー)を設計できます。
しかし、教科書通りの定インピーダンス型ネットワークをそのまま使うと、多くのスピーカーではクロスオーバー付近の周波数特性が持ち上がり、耳障りな音になりがちです。
さらに、スピーカーを理論通り大型化すると、設置性が悪くなり、ユーザーに敬遠されてしまいます。
そのため、実際の製品ではネットワーク定数を意図的にずらす手法が用いられます。
たとえば、500Hzでクロスさせる場合でも
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ウーファー側は300Hz程度
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ツイーター側は1kHz程度
といった具合に設定されることがあります。
この結果、規定インピーダンスよりもクロスオーバー帯域でインピーダンスが上昇します。
インピーダンスが上がった帯域では供給電圧が下がるため、周波数特性の盛り上がりが抑えられます。
このように、スピーカーエンジニアは測定と試聴を繰り返しながら、最適なネットワーク定数を決定しています。
定電流アンプで駆動するとどうなるか
このようなスピーカーを、定電流アンプで駆動するとどうなるでしょうか。
代表例として、EL34シングルアンプで駆動した場合を考えます。
定電流ドライブでは、クロスオーバー付近でも一定の電流が流れ続けます。
インピーダンスが高い帯域ではアンプ負荷が軽くなるため、スピーカー端子にかかる電圧は上昇し、その帯域の音圧がやや持ち上がります。
この現象が、**「真空管アンプは暖かく、ゆったりした音がする」**と表現される理由のひとつです。
真空管アンプにも例外はある
ただし、すべての真空管アンプが定電流的というわけではありません。
たとえば
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マッキントッシュ MC275 のようなユニティ・カップルアンプ
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OTLアンプ
これらは20dB以上の負帰還をかけることができ、定電圧と定電流の中間的な特性を持っています。
そのため、同じ真空管アンプでも音の傾向が異なり、そこにオーディオの奥深さと楽しさがあると言えるでしょう。
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まとめ
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スピーカーはモーターと同じ原理で動いている
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トランジスタアンプは基本的に定電圧ドライブ
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真空管アンプは定電流的な特性を持つものが多い
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アンプの駆動方式によって、スピーカーの音は変わる
この仕組みを知ることで、「アンプで音が変わる理由」が、感覚ではなく理屈で理解できるようになります。

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