真空管アンプの魅力とは何か
真空管アンプは、半導体アンプと比較すると、測定上のひずみ率は桁違いに大きい場合が少なくありません。
それにもかかわらず、現在でも多くの愛好者が存在するのは、なぜなのでしょうか。
一般的な説明としては、「真空管アンプのひずみは主に2次高調波成分で構成されており、それが音の色付け=カラーレーションとして心地よく感じられる」という定説があります。
この考え方自体を否定するつもりはありませんが、真空管アンプの魅力は、それだけでは語りきれないように思います。
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小音量時のひずみ特性に注目する
多くの真空管アンプは、小出力時のひずみが意外なほど少なく、0.05%以下から徐々に増加していく特性を持っています。
一方で、出力が1W程度に達すると、ひずみ率が1%前後になる機種も珍しくありません。
とはいえ、1Wという出力は、一般的な家庭環境ではかなり大きな音量です。
人間の聴覚は、大音量時にはひずみを細かく聴き分けるよりも、聴覚そのものを守る方向に働きます。
逆に、小音量時には、周囲の変化や危険を察知するため、音色や質感に対して非常に敏感になります。
その領域において、真空管アンプは、よほど設計の悪いものでない限り(例えばハムノイズが目立つような場合を除いて)、実に快適な聴感をもたらします。
2〜3kHz付近の感度の鋭い帯域で気になる成分が出ることもありますが、それも含めて「個性」と捉えれば、十分に許容できる範囲でしょう。
ダンピングファクターと音の自然さ
真空管アンプは、一般にダンピングファクター(DF)が低めです。
しかし、このDFの小ささが、必ずしも欠点とは限りません。
むしろ、音の立ち上がりや立ち下がりが過度に制動されず、自然で気持ちよく感じられるケースも多いのです。
この点を考えると、現在でもエレキギターアンプに真空管が使われ続けていることにも納得がいきます。
ギターアンプと多極管の関係
興味深いのは、ギターアンプの世界では、ひずみが少なく切れ味の良い三極管アンプが、ほとんど採用されていない点です。
EL34や6L6といった定番の出力管も、三極管接続で使われることはまずありません。
これは、多極管特有の内部抵抗の大きさ、すなわち極端に低いDFこそが、ギターアンプ独特の音色を生み出しているからでしょう。
制御しすぎないことが、表現力につながっているとも言えます。
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真空管アンプは「音色を楽しむ装置」
こうした点を踏まえると、真空管アンプの魅力は、最終的には「音色を楽しむ」という一点に収束します。
EL34のシングルアンプや、6BQ5(EL84)プッシュプル構成が好まれる理由にも、自然と納得がいきます。
実用面では、残留ハムが気にならないレベルまで、適度にNFB(ネガティブ・フィードバック)を掛けるのが現実的でしょう。
目安としては、せいぜい14dB程度までに留めるのが、音色と静粛性のバランスが取りやすいと感じます。

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